懸賞金候補者の紹介

一次審査を通過したファイナリスト(懸賞金候補者)の情報を掲載します。(7月10日時点での一次審査通過者、敬称略)
なお、本ページでの各者の記載事項の著作権その他の知的財産権は、ファイナリスト(懸賞金候補者)に帰属します。


テーマ1:リチウムイオン蓄電池の検出装置(ポータブル型・設置型)

大谷清運株式会社
提案AI搭載型多目的LiB選別システムの開発

X線画像処理とAIによる画像解析により、容器包装プラスチックや製品プラスチックの袋形態で回収した廃棄物を、破袋工程前にLiB混入検査を行うことが可能な検査装置(OSLiBソーター™)と新たに開発する供給装置の組み合わせにより、処理数を時間当たり1300袋(約1.3トン)を達成することを目的とする。

X線画像解析にAIを用いているため、多様なLiB内蔵製品や新製品にも対応が可能であり、また本システムの利用者の希望に合わせて検出物を設定することを可能にする。例えばLiB内蔵製品に加え、基板や注射針など有用品や危険物を検出物に加えられる。

以上に加え、産業廃棄物処理工場での活用可能性についても追求する予定である。

大谷清運株式会社 ホームページ
https://www.otaniseiun.com/
学校法人芝浦工業大学 チームリサイクルデザイン
提案テラヘルツ波によるLiB検出装置の研究

テラヘルツ域の周波数を持つテラヘルツ電磁波は非金属物質に対して透過性を持ち、金属からは反射されるため、可燃性廃棄物に混入したリチウムイオン電池(LiB)を検出するポータブル型検出装置の構成方法として、テラヘルツ電磁波の発振器と受信機の応用を研究する。

提案者は組成の異なるプラスチックの混合廃棄物を分別して再生資源としての有価性を高めるため、実用されている近赤外センサの検出能力不足をテラヘルツセンサにより補完できることを確認している。このとき、テラヘルツ電磁波を反射する金属の部材を異物・危険物として検出できることも併せて確認している。

本提案は、広帯域のテラヘルツ電磁波による金属部材の検出技術をLiBの検出に応用してポータブル型検出装置を構成する方案を系統的に検証し、実機設計に必要な基礎データを取得するものである。

学校法人芝浦工業大学 リサイクルデザイン研究室
https://recycledesignsit.com/
株式会社タクマ/国立研究開発法人産業技術総合研究所
提案不燃ごみ中のLiBをAIにより検出するシステム

近年、廃棄物のリサイクル施設において不燃ごみ中のLiBが破砕工程中に圧壊、発火することにより火災事故に繋がるケースが増加している。破砕工程後で発火を検出するシステムもあるが、本システムでは不燃ごみ中のLiBを破砕工程前に検出するシステムを提案する。

システム構成を図1に示す。本システムはX線撮影装置で撮影した不燃ごみのX線画像からAIを活用した画像認識技術によりLiBを検出する。

また、本システムは不燃ごみをX線撮影に適した状態にするための前処理装置を有する。

実機施設では手選別コンベアの前に設置することで作業員へのLiBの位置の通知、もしくは自動振り分け装置とセットで設置することで検出後のLiBの除去を想定しているが、本テーマではLiBの検出までとする。

図1 システム構成
株式会社TBM
提案人体に無害なレーダー型デバイスを用いた、容器包装プラスチック中リチウムイオンバッテリーのスキャニング技術

本提案では、破袋・解砕工程前のプラスチックごみをポータブル型デバイスや工場内に設置するデバイスでスキャンし、リチウムイオンバッテリーなどの禁忌物を含むゴミ袋やベールを予め仕分けることを目指す。これにより、廃棄物処理効率を維持しつつ、安全性を確保する。

レーダーには直進性が高く人体に無害な電磁波を採用し、プラスチックとリチウムイオンバッテリーを区別する。しかし、アルミ蒸着フィルム付きプラスチックとの区別が難しいため、画像認識技術と組み合わせて誤検知を減らす。さらに、特別な技術知識がなくても作業員が対象物の位置を把握できるよう、付属のソフトウェアを開発する。

また、廃棄物の処理効率を高めるため、ゴミ袋が山積みになっている状態でも対象物を特定可能にすることにも注力する。リチウムイオンバッテリーによる発火事故は選別工程で多く発生するため、本提案では破袋・解砕工程前のストックヤードで適切に検知し、作業員が発火リスクのあるゴミ袋を機械に投入しないようアシストすることで、発火事故の未然防止を図る。

株式会社TBMは資源循環を促進する事業を推進しており、その一環としてプラスチックのリサイクル工場を運営している。課題の当事者であるからこそ、現場のニーズに即した革新的かつ実効力の高い解決策を提供し、中間処理施設やリサイクル工場などの資源循環に関わる社会インフラの損失リスク低減に貢献する。

横須賀サーキュラー工場外観・内観
株式会社TBM ホームページ
https://tb-m.com/
学校法人同志社 同志社大学/平林金属株式会社
提案磁気を用いた廃品内のリチウムイオン電池検出装置の開発

本提案では、小型家電製品内のLiB検出を、申請者らが独自開発した交流磁場解析法により実現する。

一般の磁気計測により樹脂と金属の分類は可能であるが、小型家電には金属部品に加え、金属筐体やLiBの金属外装も含まれLiBの検出は困難であった。一方、提案手法は、交流磁場を対象物へ印加した場合の応答を解析することでLiBを判別するものである。

この装置は関連施設内に設置して使用することを想定しており、前処理を必要とせず、廃棄物の処理工程前にLiBの検出を行う。現状は、回収した小型家電製品に混入したLiBの検出を想定しているが、将来は磁気に反応する様々な廃棄物が含まれている中での検出も目指す。

今回は、前述の解析法を用いたプロトタイプ開発を行い、磁場印加、応答信号の取得・解析を自動で実行しLiBの有無を判定すること目指す。これまでに、LiB単体や約1 mmの金属下におけるLiB検出を実証したが、実際の小型家電製品は、形状、金属部品の配置など様々であり、このような条件でのLiB検出が課題である。100%のLiB検出に向け、印加磁場強度の向上、検出磁場の位置、解析手法などの最適化で課題解決を推進する。

株式会社PFU/株式会社IHI検査計測
提案リチウムイオン電池(LiB)検知システム

ベルトコンベア上に流れてくるごみをX線装置で透過し、その画像をLiB検知特化AI認識エンジンで対象物を検知する。検知後は、作業者の方にプロジェクションマッピングにて対処物の位置を照射して、場所をサジェストする仕組み。 ※将来的には、LiB検知だけでなく、危険物(スプレー缶や刃物など)まで拡張予定

製品化に当たっては、検査・計測業界のプロフェッショナルである株式会社IHI検査計測のX線技術と当社のグローバルシェアNo1.のスキャナ開発で培った“光学・画像処理技術(コア技術)”と独自AI認識アルゴリズムを掛け合わせることで、高精度でリチウムイオン電池を検知し、火災事故を防ぐ。また、正確にリチウムイオン電池を分別できることで、再資源化への動きを加速化することにも貢献していきたい。

装置外観図(イメージ)
株式会社PFU Raptor VISION
https://www.pfu.ricoh.com/raptor-vision/

株式会社IHI検査計測 X線検査装置
https://www.iic-hq.co.jp/products/P-01-03/
株式会社 物井工機
提案X線画像認識を用いたLiBの検知装置

本装置は容リプラ処理施設と不燃物中間処理施設への導入を目指しています。ゴムベルトコンベヤにて搬送中の処理物にX線を透過してリチウムイオン電池(LiB)を検知します。実現に向けて重要なポイントは以下の2つです。

1.既存の稼働施設に合理的に装置を導入可能であること(大幅な構造を変更せずに後付け可能であること)。

2.X線および画像処理技術を使用してLiBを自動検出することができること。

ポイント1では、施設の搬送ラインを解体・切断することなく後付け可能なX線検査装置のパッケージ化を目指します。これにより、施設の停止期間を最小限に抑えながら装置を設置できます。

ポイント2では、X線画像からLiBを特定するための画像処理アルゴリズムを構築します。

これらの取り組みにより、手選別工程の省人化並びに選別精度向上(容リプラライン)と、火災や破砕機破損等、現状LiBによって発生している脅威を軽減します。

株式会社物井工機ホームページ
http://www.monoi.co.jp

テーマ2:リチウムイオン蓄電池の発火危険性の回避・無効化装置

株式会社電知
提案廃棄小型リチウムイオン電池用放電診断機

廃棄用小型リチウムイオン電池の放電診断機を開発し、個々の廃棄電池の状態を診断しつつ、放電処理を行い、廃棄電池の回収・運搬工程での発火危険性を回避する。ここで、安全に放電可能な電池は放電処理を施した上で通常運搬する。一方、診断不可、放電不可あるいは発火リスクのある廃棄電池については、発火や延焼等を防ぐ回収ボックスに入れて迅速に専用回収業者へと運搬する。

本提案の開発

稼働場所:自治体や小売店の小型家電回収ボックスおよび電池回収箱
対象:リサイクルマークのあるリチウムイオン電池およびこれを内蔵する電気製品
大まかな仕組み:上図参照
課題と解決策:廃棄電池の発火リスクを回避するため、回収された電池は迅速に放電処理を行うことが望ましい。本提案の放電診断機により、廃棄電池の状態を診断しつつ安全な放電処理を行うことができる。なお、廃棄電池の中には数は少ないと思われるものの、診断あるいは放電処理を行うことができないものや、その時点で発火の危険性を孕んでいるものも含まれる。これらについては別途回収ボックスに入れ、発火や延焼等を防ぎつつ、迅速に専用の回収業者へと運搬する。

株式会社電知Webサイト
http://denchi.ai
大川 敦也
提案電解液を凍結させた状態での破砕プロセス

電解液の融点が-60℃を下回ることはないという性質を逆手に取り、以下のプロセスでリチウムイオンバッテリーの安全なリサイクルを目指す。

冷却プロセス:リチウムイオンバッテリーを-60℃まで冷却し、電解液を凍結させることで発火リスクを低減する。
破砕プロセス:冷却されたバッテリーを破砕機で解体し、温度センサーで継続的に温度を監視する。解体時に材料が脆くなるため、効率的に破砕が行われる。破砕機が低温で正常に稼働するかどうかも、検証事項に含まれる。

本プロジェクトで実証すること

常温の場合に発生する温度上昇と、本プロセス(-60℃)で生じる温度上昇を比較することで、本プロセスの有効性を検証する。また、凍結しない程度の低温(0℃、-30℃など)でも破砕を行い、凍結そのものの影響についても調査を行う。

さらに、物理的な要因(破砕の向きや速度が温度上昇に影響するか否か)に関しても検証を行う。凍結破砕は一般的に選択性の高い破砕手法であるが、本手法でも選択的に素材が回収できるかどうかの検証も行う。

学校法人東北工業大学 下位研究室
提案アルカリ水溶液を用いたLiB発火無効化装置

廃棄予定の小型リチウムイオン電池(廃LiB)を一度、回収する施設において発火無効化処理装置を提案する。現リサイクル工程において廃LiBの発火リスクは懸念材料になっている。そこで我々はリサイクル処理中の発火リスクを無効化するために、アルカリ水溶液を利用したリチウムイオン電池破砕技術および装置の提供を行う。

装置概要として図を示す。廃LiBをアルカリ水溶液中に浸した状態を維持しながら、釘刺し試験の要領で廃LiBに穴をあけ、24時間浸しリチウムイオンを失活化させる。その後、廃LiBを取り出し搬送用の袋に入れ、エポキシ剤を入れ固めて穴を塞ぐ。最後に袋の封止を行い処理完了となる。

本装置は使用済み回収施設等に設置し、操作は回収施設に勤務する方を対象とする。我々は、廃LiBの発火無効化を目的としているが、これらの処理により破砕・焼成プロセスにかけるコストに限らず再資源化のための経済的コストも抑えられる可能性がある。このようなリサイクル循環を構築する「キッカケ」も提供できると考える。

アルカリ水溶液を用いたLiB発火無効化装置
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 石垣 範和
提案小型電子機器回収用、固形消火剤の開発

LiBの発熱、炎上の原因として可燃性の有機電解液を用いた液系電池の場合、主に、外部要因と内部要因によるショートの2種類が存在する。特に近年では、ごみ処理施設の粉砕機等の外部衝撃による外部要因による発火・炎上が問題視されており、可燃物に燃え移ることで火災被害が大きくなることから早急な対策が求められている。電池の発火・炎上を予防するには、根本的に、ショートを防ぐ、もしくは電解液を改善する必要がある。しかし、この方法では現在市販されている数ある液系電池の発火予防解決には多大な費用、専門的知識が必要とされ容易ではない。従って、現実的なLiBの発火危険性の回避・無効化には、簡易に電池を基とした発熱・発火の現象が防げないため、炎上防止、もしくは炎上後の初期消火を自動で行う手法の開発が求められる。

以上の背景から、本提案では、小型電子機器回収用、固形消火剤を開発する。開発する消火剤は、専門知識が不要な消火剤であること、将来的には小型電子機器のみならず家庭ごみから炎上する可能性のある全てを対象物とした消火剤を目指す。

学校法人早稲田大学 所研究室
提案電気パルス破砕機能つきLiB失活システム

地方自治体やリサイクラー企業等の廃棄物処理場を想定する。装置は定置型であり、基本的な操作訓練を受けた作業者が一人で操作できるものとする。対象は単三乾電池型やスマートフォン、ハンディ扇風機といった、形状が不ぞろいの小型LiB(あるいはそれらを含む小型機器)を1~3個程度とする。最終的にはより容量の多いセルを大量処理できる装置を目指し、スケールアップを視野においた設計を目指す。

現在、LiBを失活させる方法として塩水に漬けこむ方法が一般に知られているが、完全な失活までには2~3日程度要することが多い。さらにLiBが機器内や樹脂に埋め込まれている場合、失活までの時間や方法は明確でない。本提案では、省エネルギーな電気パルス法を用いて作業者に危険が及ばない装置構成で予備破砕を行い対象物に最小限のダメージを与え、水または塩水を浸透させて短時間で失活させることを目的とする。

本提案では電気パルスの放電回路に接続された、放電破砕するためのヴェッセル(破砕用水槽)の設計を中心として製作を行う。ヴェッセル内は水および塩水で満たし、簡易な操作で破砕と同時に失活を行い、注水・排水をスムーズに完了できるものとする。

電気パルス破砕機能つきLiB失活システム
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